2013年8月24日土曜日

グリムの森ができるまで 5 [展示とショーの準備]

チケットとフライヤーが出来上がってからパーティーまでは二ヶ月切っている状態でした。
ショーの支度をさあ始めよう!という段階ですが、展示の準備をせねばなりません。レイアウトや展示に使うデータなどを素早く仕上げてリソースセンターに了解をいただき、搬入に備えます。
急遽ポスターの制作もすることになりました。



展示の設営はリソースセンターのスタッフの方々が一からたった2日で仕上げます。
2日目に同行、微力ながらお手伝いさせていただいたのですが、スタッフの皆様は驚くほどのパワフルさと情熱で会場を作っておられ、本当に感服致しました。ああいう大人になりたいものです。(既に十二分に大人ですが)

写真の上下を見比べていただけると2日間でリソースセンターの空間がどれだけ変化したのかがお分かりいただけると思います。





abilletageコルセットstyle展は2013年6/5から6/19まで開催されました。ご来場頂いた方々、ありがとうございました。
学園内では迷子になりませんでしたか?私はなりました。


展示時期と並行し、ここから先は私よりもbambiちゃんが大忙しです。ショーのそれぞれのパートのパフォーマー・モデル達と打ち合わせ、衣装制作、フィッティング、リハ、照明リハ、フードの打ち合わせなどなど、やる事は山積みです。
この辺りのbambiちゃんや出演者達のお仕事については、残念ながら私は同行していないので書く事ができません。私は私でその他のお仕事で手一杯な時期でもありました。
この時期、abilletage関連では今回のパーティーに合わせて発売されるablaxas.とのコラボレーションフレグランスのパッケージデザインをしたりもしていました。





度々メールや電話でショー制作の進捗状況を聞いていたのですが、出演者の皆さんはそれぞれ多方面でご活躍されている方々ばかりなので、打ち合わせもスムーズでリハも素晴らしいとのこと。何も心配は無さそうで安心です。
ある程度は先にショーの構成や演出などを一緒に考えましたが、パフォーマーの皆さんの力でどんな風に仕上がるのか本当にわくわくしました。

さて、ショーで使用される音楽は私が選曲しております。今回は全曲選ばせていただいたので、大いに悩みました。最後に使ったチャイコフスキーの眠り姫以外は、邦盤は発売されていない海外のインディーズ的な音楽だったので新鮮に感じていただけたのではないでしょうか。
選曲後、音楽を一部編集したりサンプリング的な音を更に加えたりもしました。編集作業はとても楽しかったです。昔とった杵柄というやつです。




あとちょっとだけつづきます。

グリムの森ができるまで 4 [写真の加工と仕上げ]

さて、今回は撮影した写真を加工していくお話。パソコン上で画像データを扱った事のない方にはちょっと退屈かもしれません。
なんだかんだいろいろ弄ってるんだな〜と適当に読み進めていただければ幸いです。



ほとんどの作業はphotoshopで行います。私が使用しているのはCS5ですが、10年前くらいのphotoshopでもできるような技術しか使っていません。

まずは撮ったデータをデジタル現像。
私はこの段階で明るめ、中間、暗めの3枚に書き出します。3枚をphotoshop上で重ねて、いわゆるHDR的な手法で仕上げます。
私の写真はよく絵のようだと言っていただきますが、構図やポーズに加え、写真を撮る上でどうしても免れない黒潰れ、白飛びが無いからそう見えるのだと思います。ソフトを使ってHDR的なものをある程度自動で生成するのでなく、全て手作業でレイヤーマスクを使って必要な階調を取り出していきます。(この辺りは本当にカメラやphotoshopを使ってる方でないと理解し辛い話で申し訳ないです)
ただこの作業は程度が重要で、やりすぎると気持ち悪い不自然なものになりますし、個人的には絵画的というより写真的な構図のものには合わないと思います。
人間の目というのは敏感で、写真を普段あまり見ない方でも不自然なものをあっさりと感じ取ります。
とはいえ、私の作品でも不自然だと感じる方はいらっしゃるでしょうし、ある程度好みにもよるとは思いますが、レンズを通して撮影した写真のクリアな良さもちゃんと生かすように仕上げたいと日々思っています。



こんな感じで人物部分が出来上がりました。それをphotoshop上でカパッと枝の枠に重ねます。
こういう合成段階において、はめてみて不自然さを感じる時は大抵陰影の方向が合っていないか、色温度やHDR的な仕上げの具合がちぐはぐだからです。コラージュでなく、それぞれがそこに同時に存在するように見せたい絵作りの時は、特に陰影の方向は重要です。

さて、人物は木の枝のフレームに編まれるように留められているリボンを指にかけている、という設定なので、リボンを作らなくてはなりません。
画面上でアタリをつけたものを大きめにプリントして、その上に小さい紙に打ったハトメとリボンを配置します。(かなり薄くプリントしたので写真ではあまりよく見えないと思いますが、うっすらと線があります)
枝のフレームと同じく真上から撮影、photoshop上で切り抜きます。



これでやっと必要なデータが揃いました。それぞれのレイヤーのグループを重ねていきます。ざっくりな図解ですが、こんな具合です。



完成したものを見るとお分かりいただけると思いますが、人物はフレームの後ろに居るのに腕はフレームの前、リボンもフレームの後ろに回り込んでいたりします。この辺りは部分的に複製してレイヤーマスクを使ったりしつつ、矛盾の無いように仕上げていきます。

ロゴや日付も入れて完成です。裏のデザインをササッと仕上げ、チケット用の画像やデザインも完成させます。後は印刷所に入稿するだけです。



この時点で5月半ば。同時に制作してきたヴィランズ柄・プリンセス柄のデザインと刷り見本後の修正も終わっていました。



両方の柄とも色が無い印象だと思いますが、実際は4色で刷っています。色の出方の調整が多少難しかったですが、最終的には無事納得のいく色味になりました。
実際に完成したワンピースやスカートはabilletageのオンラインショップでご覧いただけます。

一見2種類しか作っていないように見えますが、それぞれ3段階の丈に合わせて3パターン作っているので、計6種類。1m幅のデータをそれぞれ開いて直していくので、我が家のmacも坂道を登る非力な軽自動車のような必死さでがんばります。
ぐぬぬぬ…という声が聞こえてきそうです。

そして数日後、印刷されたフライヤーとチケットが届きました。
まずまずの仕上がりです。手に取ってくれた方の目を楽しませる事ができれば嬉しいです。



この時期には「かわいいコルセットstyle2」の撮影も無事終わっており、テキスタイルとフライヤー、チケットも完成、出演者も出揃い、パーティーまでの準備前半が終わったと言えます。
とりあえずのスムーズな進行にホッとするのも束の間、文化服装学院リソースセンターでの展示の件がほとんど進んでいない事に気付き、青ざめる我々でありました。

つづく

2013年7月31日水曜日

グリムの森ができるまで 3 [撮影当日]

さて、やっと訪れた撮影当日。
ギリギリのスケジュールに苦戦しつつ、bambiちゃんが無事撮影用のワンピースとコルセットを完成させていました。

開始からしばらくはヘアメイクの夢美ちゃんにおまかせしっぱなしの進行になります。
私の我儘なオーダーをいつも見事に具現化してくれる酒井夢美ちゃんのヘアメイク、安心しすぎて人ごとのように楽しく準備を見守る私です。

くるくるに準備してくれた毛達を次々とほぐしていく夢美ちゃん。なかなか激しいです。





今回のメイクは割とシンプルですが、顔周辺のヘアのバランスに時間がかかりました。
撮影のコンセプトは、お姫さま、魔女などの悪役、年齢を重ねた老女など、童話の世界に出てくる女性それぞれのイメージを合わせ持たせることなので、複雑に絡み合った髪にはこだわりたいところです。
相談しつつ、夢美ちゃんが的確な位置にヘアをデザインしていってくれます。







今回のモデルもオーナーでデザイナーのbambiちゃん。
私はものを作っているアーティスト本人を撮るのが好きです。コルセットはどんな体型の女の子でも身につければそれぞれの魅力が引き出されると思いますので、デザイナーでもあり、背格好的にも「等身大の女の子」的魅力のある彼女本人がモデルをするのが面白いんじゃないかと思うのです。



毛に埋れて動けず眠気に襲われるbambiちゃんと対照的に、夢美ちゃんは素早くてきぱきとヘアメイクを進め、私は毛に埋れて見えなくなっているリンゴやチェリーを掘り出す係になっていました。
2人を見守りながらお菓子を食べる係もつとめました。





ヘアメイクが完了し、チェリーも程よく掘り出せたのでとうとう撮影です。相当腰に悪そうな姿勢で撮影位置を確認する私。夢美ちゃんが撮ってくれました。
撮影現場はかなりアットホームなムードです。アットホームというか、ほんとにバンビちゃんの家です。私の写真は自宅の簡易スタジオか友人の家などでのんびりわいわいと撮影される事が多いです。

盛り盛りのドリーミーなヘアと可愛らしい衣装のbambiちゃんに対して相当どうでもいいファッションの私です。その後夢美ちゃんがチェリーを踏みつぶすというアクシデントもありつつ、無事にイメージ通りのものが撮影できました。



著名なアーティストとのお仕事も多くこなしている酒井夢美ちゃん、撮影においてはかなり荒唐無稽な提案をする私に「むちゃぶり待ってます!」と言ってくれます。女神のような心の広さに感謝しっぱなしです。
延び延びになっている「夢美ちゃんをちやほやする会」もそろそろ開催したいところです。



必要な絵が無事撮れたので、50mmレンズで撮影して遊んだりします。
私は絵を描くようにラフ通りの撮影をするタイプなので、こういった写真が使われることはほぼありません。
なんとなく次回のアイデアになったりする事がありますが、ほとんど撮影後の遊びという感じです。楽しいです。





写真を見てたら無性にリンゴを食べたくなってきました。
つづく

2013年7月27日土曜日

グリムの森ができるまで 2 [テキスタイル制作や素材集め]

グリム柄と呼ばれるアイコンを並べたようなテキスタイルデータがプリントに旅立っている間、メインビジュアルのラフとプリンセス柄・ヴィランズ柄の制作も始まります。




メインビジュアルのラフにOKが出たのでテキスタイルの制作を進めつつ、森や葉っぱなどの素材を集めます。
幸いにして自宅の周辺は森が多いので助かります。






えっさほいさといろいろ進めているうちにあっという間に4月、グリム柄のプリント見本が上がってきます。

ふむ、良い感じ…と思いきや、ここでバンビちゃんからピンクに修正が入ります。ちょっと濃すぎるとの事。
さすが普段からピンクを愛用するバンビちゃん、ピンクへのこだわりが違います。(その後ピンクは修正され、無事上品でクラシカルな色になりました)



テキスタイルのプリント待ちの期間に、メインビジュアルの森部分、枝のフレーム部分を作ります。枝は、お爺さんは山へ芝刈りに…という具合に森に拾いに行きました。
森部分は葉っぱや木の幹の写真、馬や鳥のシルエットなどと組み合わせていきます。一応全て自分で撮影した素材です。



枝は床に組んで真上から撮影。macに取り込んで、ちまちまと切り抜きます。




4月の後半にはヘアメイクの酒井夢美ちゃんとも打ち合わせ。
恋バナをメインに脱線しつつ撮影時の細かい事項が決定し、メインビジュアルの撮影はGW明けに決まりました。
チケット用にどんな画像を作るかも決定。(こちらのリンゴを持った左下の案になりました。)



この時期確かbambiちゃんは、新しく出版される「かわいいコルセットstyle2」用の制作に追われて大変な忙しさだったように思います。
さらに文化服装学院内、リソースセンターにてabilletageの展示が決まっており、そちらも打ち合わせて構成を練ります。





つづく

グリムの森ができるまで 1 [打ち合わせとテキスタイル制作]

コルセットブランドabilletageはこの7月で無事二周年を迎えることができました。
Calnaval du abilletage -Grim's Forest-へお越しいただいた皆さま、普段からabilletageをご愛顧くださっている皆さま、abilletage創立からお手伝いさせていただいている私からも厚くお礼申し上げます。




私はabilletageに所属する者ではありませんが、イメージ写真、広告やテキスタイルなどのデザイン、企画などのお手伝いをさせていただいている村上キヨというものです。
今回オーナー、デザイナーであるbambiちゃんと、Grim's Forestのメインビジュアルの制作裏を公開するのも良いかもしれないね、という話になりました。私の写真についても、どうやって作っているのか度々ご質問いただきますし、自分としても簡単な記録として残しておいたら楽しいのじゃないかと唐突にこのブログを作ってみました。
毎回時間ギリギリの制作になってしまう私達、こうして細かく書き残しておけば次回こそは気をつけるのではないか…という戒め的な意味もありつつという感じです。

「こんな感じで作ってるのか~楽しそうだな~」または「地味な作業だな~」などなど、いろいろ感じていただければ幸いです。テキスタイルの制作にまつわる話や、無駄話も途中挟みつつ行きたいと思います。


さて、パーティーに向けての制作が始まったのは3月でした。今回はオリジナルテキスタイルを発表したい、という話だったのでデザイン、テキスタイルの刷り見本出し、プリントする時間など逆算すると、3月でも遅いくらいです。

とりあえずbambiちゃんとショーの内容も兼ねて打ち合わせです。グリム童話をコンセプトにするのもいいね、と以前から話していたのであっさりとグリム童話コンセプトに決定。
あーだこーだと話しながらテキスタイルのイメージ、ショーの構成から組み立てていきました。



こちらは打ち合わせの際にbambiちゃんがまとめたショーの構成。こうして見ると初期段階でイメージしたものがほぼ実現できたんだなあと感慨深いです。
「セクシー」と書いても可愛い文字になってしまうところがbambiちゃんらしいです。

できればメインビジュアルにオリジナルテキスタイルの服を使おう、という事になったため、メインビジュアルのラフはひとまず置いておいて、「グリム柄」と呼ばれているテキスタイルの制作を進める事に決まりました。





テキスタイルのラフを起こす事から始め、それぞれのアイコンを制作していきます。

かぼちゃの馬車にバツがついているのは、実際のグリム童話には出てこないからです。
ショーでは演出的にグリム童話に忠実とはいかないので、テキスタイルにおいてはなるべくグリム童話に出てくるモチーフだけを使いました。
ガラスの靴、かぼちゃの馬車が出てくるのはシャルル・ペロー版だそうで、グリム童話版では魔女でなく白い鳩がシンデレラを助けます。ガラスの靴もグリム童話版では金の靴なのでそちらに合わせました。




各アイコンは写真と組み合わせたものもありますが、ほとんどをmac上で一から描きました。
ファミコン世代の私は子供時代、真っ黒な画面に並ぶ正方形に収まるカクカクしたドット画のアイテムアイコンに心ときめかせたものですが、今回のデザインもそういったポップさもありつつ、ストーリーを感じさせるものにできればと考えました。

各アイコンデザインにOKが出たので、bambiちゃんが色のバリエーションを決めていきます。この辺りが彼女の勘の見せどころです。



つづく